そんな内容を読んでいる内に視界がぼやけてきた。




液晶画面の上に小さな水溜まりが作られていく。

 


もう、それだけで十分だよ。




人の気持ちをすぐに読み取っちゃって
メールなんか送ってきちゃって。




行ってないところ、なんでそんなに覚えてるの?





好きなんて、
なんで、こんな私に言ってくれるの?




いっつも、いきなり俺様キャラになるのに





こういうときに限って素直にならないでよ。





どうせ、さっき泣きかけだったのにも
気づいてるくせに。





本当に、星哉には全部お見通しだ。










恥ずかしい、恥ずかしいけど
頑張って返信を書く。







メールを書くのが苦手なのは
しょうがない。
だからこそ、苦手なものを使ってまでも
伝えたいことを書かなきゃ。





素直にありがとうとか?




ありまで打ち掛けて
身がよじれそうな恥ずかしさを感じた。




ここで素直に書ければいいのに、
私はそこまで可愛らしくない。






せめてものの思いで
嬉しい、と打った。
あと、もう一息だ。





「明日、迎えに行く」

 



こんなことしか出来ないけれど、
それで星哉がいいと言うのなら。







してやるよ、こんなことくらい。





惹かれているのは私だけじゃないと信じて。





読んだら恥ずかしくなって
消してしまいそうだったから、慌てて送信する。





送信終了の音が
押し当てた胸の上で微かに振動した。










下校チャイムの音で我にかえった。
意外と時間が過ぎるのは早い。





そんな風に、
伝えるなきゃいけない事も、
ぐだぐだしていたら
言えなくなってしまう気がした。








明日には……いや、今日行かないと。
もう後悔したくない。
巡りめぐっていつかの後悔になってしまうとしても、
今、後悔したくないから。