「全部。笑顔もそうだし、きれいな横顔も、必死で好きな人のことを追いかける直向きなところも」
「武田君」
名前を呼ぶことしか出来ない。
それくらい、嬉しくて。
もしかしたら、私はどこかで気付いてたの?
星哉のおかしいところに。
本物じゃない好きという言葉に。
だからこんなに嬉しいのだろうか?
こんなに、差があるのだろうか?
「ねぇ、向日葵。」
自分を指差して武田くんは自信なさげに笑った。
「俺、優翔」
優翔。
心の中で呼んでみる。
心の中で、他の誰かが騒ぐ。
その誰かくらい、誰か分かる。
そいつは、星哉の名前を叫ぶ。
かき消して、また優翔と繰り返す。
それでも、星哉と叫ぶ声は徐々に大きくなっていく。
抑えられない大きさまでに膨らんで
私の中で、暴れるんだ。
……それでも。
私は応えるんだ。
この声に、応えるんだ。
星哉が美結を愛するんだから、
この気持ちに蓋をして生きるんだ。
「優翔」
自ら、その腕の中に飛び込む。
そうやって、嘘を塗り固めて愛って出来てく。
きっと、そうだ。
込み上げてきたのは、涙ではなくて笑いだった。
自嘲含め、仮の嬉しさ。
「向日葵のその顔、すっごくいい」
「だって今、すごく嬉しいんだもん!」
向こうに見える笑顔に、星哉が重なる。
「俺は、離さないよ」
いきおいで落とされたキスは爽やかだった。
……んだと、思う。