「ALS……その筋萎縮性だっけ? って何?」
事実を、聞きたくないと願っているのは
自分なのに、どうしても聞いてしまう。
そうやって、どこかで大丈夫だと
信じていないと私はやっていけないんだ。
重かったら歩けなくなるとかだ、きっと。
命には関わるわけがない。
歩けなくなるだけで困るけど
でも、それくらいなら大丈夫だと思うし
それを信じる。
そんな風に思っていたのは、甘かった。
神様は、そんなに優しくなかった。
「言ったろ、死ぬって」
死ぬと言う言葉だけが私の中で、
何重にもぐわんぐわんと響いた。
“死ぬ”
なんだか、得体の知れない重々しさが
死ぬという単語にまとわりつく。
「二年、だったはず。俺、二年で死ぬ」
二年。
短いのか長いのか、分からなかった。
きっと星哉のことだ、
あっという間にころっと死んでしまうに違いない。
気付いたら、安らかに眠ってましたなんて
いかにもありそうだ。
星哉は、そんな奴だ。
星哉は。