走って、走って限界に近くなった私の前に広がったのは。
いつか、来たいなと星哉に話していた場所。
どの季節でも花が咲いている場所、
丘の中腹。
夏に見に行ってみたい、そう言ったのを覚えている。
たしか、あの時は秋だったから。
「向日葵がたくさん咲いてるだろうな」
あんなに、優しい顔で言ってくれたのにね。
もう、ここに星哉と来ることは叶わない。
「話していいよ」
「え?」
「無理しないで、泣いていいんだよ?」
星哉とはまた違う優しい声。
今はなにも話したくない。
今言葉にしたら、きっと本音も漏れてしまう。
そう思ってもその優しい声に私は、酔っちゃって。
「私は、たまたま、あるべきサイクルの中に紛れ込んだエラーなんだよね、きっと。あの二人こそが一番なのに。なんで気付かなかったんだろう? 顔だって性格だって考えれば私が美結に勝てるところなんてないのに」
「それは違うよ」
「武田君?」
「俺が好きになったのは、星哉を追いかけて隣で笑う、萩本さんだし。その時間が無駄とは俺は思わない」
「私のどこがよかったの? 武田くんにとって」
それは心底気になることだった。
私、結構分かりやすく線引きしてたと思ったのに。
諦めずにここまで来てくれたことの原動力を、知りたい。