「分かればいい」
「何を」
「私が向日葵より上ということを」
「ふざけんじゃねぇよ」
出たのはまたかすれた声だった。
「来たわね」
歪んだ顔で笑いながら、長谷川は甘ったるい声を出した。
「ねぇ、なんで? 星哉。隠さなくていいんじゃないの?」
ベタベタな声。
計算し尽くされた言葉。
「向日葵が泣くなんて可哀想だから、ずっと好きなふりしているんでしょ? 私がいるんだよ? 怖くないよ? そんな星哉の優しいところ好きだけど、最後くらい見た目も私のものになって? 私のこと、一番目にしてくれたじゃない?」
あの足音が止まる。
ドアの前に、向日葵がいる。
俺が抵抗出来ぬよう口を塞いで、彼女は芝居のかかった台詞を並べていく。
「ねぇ、入学してちょっとからずっとそうでしょ?」
向日葵。
お願いだから、勘違いしないでくれ。
こんな体、いらない。
ここから抜けたい。
目を思いきり俺はつぶった。