逃げられそうなくらいに緩い腕が
病魔の強さを物語る。






病魔は、だいぶ彼を蝕んでいるみたいだ。







言いかけた言葉を呑み込んで、星哉に身を預ける。






きっと物理的な力でここを抜け出せたとしても
星哉の魅力からは逃れられないだろう。










……星哉が死んだらそれもなくなるのかな。





そう思ってからやっぱり思い直した。
どうしたって、今の私じゃ到底無理だ。







「お前の、そういうところが好きなの、そういうのが見合うってこと」



 



右耳の側で囁かれた言葉が
私を揺さぶる。






 




見た目だけ笑って、
心の中で頭を抱え込む。
自信なんか、ない。






彼を支えていける自信なんか、ないんだよ。






そして、もうひとつ。






このあなたの弱ってしまった力くらい、
私たちの関係は揺らいでる。







ずっと過去に捕らわれて、見た目だけの関係で
過ごしてきたから、脆いんだよ。










「俺さ、ALSなんだ」








頭の中にクエスチョンマークがたくさん
浮かんでいた。





ALS。

 





何なんだろう。
ただ、嫌な響きだなとだけ思った。








「筋萎縮性側索硬化症、っていうやつ」









私には背負いきれない何かが、
彼を背後で抱きすくめる。
背負えないものを、
背負おうとして






 
私は本当に、やっていけるんだろうか?
こんな関係を伸ばしてもいいんだろうか?