パタパタ。






スリッパがすれる音。






「検温しますね」



  

どこからか、聞こえる看護師さんの声。






至って平凡な朝。






夢から薄れていってこっちの世界に現れるように、






平行移動のように、俺は目を覚ました。







瞼を閉じれば、昨日に引き戻されそうだ。







向日葵と遊びに行ってから一週間。









右腕が、動かない。






動きにくいんじゃなくて、動かない。







自分のものじゃない感覚だった。