帰り道。
行きに乗り継いできた電車を引き返しながら、俺は向日葵と病院へ向かっていた。
明るいネオンや、人の笑い声。
これから先、あまり聞かなくなる音たち。
何だろう、こんな騒々しいものでさえ、執着してしまう。
これが死ぬ間際の人の感覚か?
いやいや、でも俺は三年後ここにいる……ということにしたい。
「星哉、遠出させてごめんね……」
頭三個分くらい、低い景色はある意味新鮮だ。
全てが少しずつ大きい。
人混みも、壁みたいだった。
「……そんなことないよ」
迷惑かけたのは、俺の方だったし。
そんな人混みに、疲れちゃったし、それを向日葵に気付かれたし……
「あ、あと二駅で乗り換えだよ」
また、人混みの波の中だ。
向日葵には、知られたくない。
こんなにも、体が思ったより辛いなんて。