少し待てば、観覧車は動き出した。
「絶対待ってたって」
私の呟きに黙って頷いてくれる星哉にも、私の意図は伝わったんだろう。
「夜景も見に来たいな」
本音が涙のようにつーっと零れた。
「もう一回、乗ろっか」
その涙は陶器のような綺麗な細工の入った手に掬ってもらえる。
「うん、乗りたい」
空が、近かった。
こんなにも、近いのに
こんなにも遠い。
もし、星哉が死んだらここに来ようと思った。
そしたら、会えるかもしれない。
でも、今度は止まっちゃったら一人で泣くしかないな。
でも。きっと私はここに来るだろう。
降りた先に、またあのアルバイトの方がいた。
営業スマイルを顔に張り付けて、こっちを見てる。
「止まりましたね、どうしたんですか?」
「恋の魔法です!」
絶対観覧車止めたのこいつだ。
で、見えてたみたいだ。
……趣味、悪い。
だけど、私はそれとは全然違うことばでその場を離れた。
「ありがとう」
ポカンとしたアルバイトさんを置いて私は星哉について観覧車から離れた。