「ふえぇ!?」


ものすごく間抜けな声が出た。





だってだって。




見下ろせば、この辺りを一望出来る。





ほんとだ、一番上だ。







「ねぇ、星哉」





「……怖いの?」






いやいやいや、感動で声が震えてるんだよ。





「一番上で止まるとかどれだけラッキーなの、私たち!」




「お前には心底、呆れを通り越して感動する……」







ガラス窓に手をついて見れば自分の姿を透過して見える、綺麗な町並み。







通る人が小さく見えて、いつもは見えないビルの上が見えて、心が踊る。





上を見上げれば真っ青の空。







夏日和、空が、太陽が近い。





「上もちゃんとガラス窓だったね」






「ちゃんと力いれてるからな、この遊園地」




星哉は少しだけ身をよじって景色を眺めてた。




「あ、星哉」





「今度はどうした?」






「観覧車の一番上でキスしたら永遠に別れないっていう言い伝え知ってる?」 




「聞いたことあるような」




「……今したい」




動き出す気配もさらさらない観覧車。






私には、それをするように暗示されてる気がしたんだ。






あと、変な予感。





キスしたら、この観覧車、動く気がした。





私の適当な予想なんだけれどね。





何も言わずに向き直れば星哉を顔がそっと近づく。




いつもは、気持ちよくて目を閉じちゃうんだけど




今日は熱を持ちすぎた触れ合いの間、目を開けていた。






やっぱり、近くで見ても繊細に彫られた顔だなって思う。





閉じられた瞼には艶がある。





白くて、さらさらな頬。





触ったら絶対に気持ちいいだろう、耳たぶ。




意外と広い、額。




全てが計算通りに、綺麗に施されていた。




そっとどこからともなく離れた唇は、星哉の香りがする。






甘い、私を何回でもすぐに恋に落とす香り。





その罠は、深くてほどけない。