「星哉の行きたい所!」
「俺は向日葵の行きたい所がいい」
何でも人に合わせるんだから、たまには自分の行きたい所も言って欲しい。
「え? でもなあ……」
向日葵は、どこも思い当たらないという顔をしている。
「遊園地、行きたい……」
暫くしてポツリ、と彼女は言った。
「遊園地な、おっけーどこがいい?」
そう言えば、あまり縁のない場所だったな。
「……観覧車に乗りたいからどこでも」
少し遠いけれど確か観覧車が有名なところ、あったな。
「時計台のところ、どう?」
「そこがいい!」
何回か小さく跳び跳ねて喜んでから、向日葵は俺の車イスを押そうとする。
「押す必要ないんですーだ」
ふざけてくるくると車イスを回して見せれば膨れてしまった。
「押したかったのに……」
面倒くさいけど、かわいいから許す。
「ごめんな、今度は押すやつにする」
電車に乗って一時間もすれば時計台前の駅。
そこで下りれば、夏休みということもあり混んでいた。