「星哉、ケーキも持ってきた」
まさか……ホールとかないよな?
たまに、すごいこと考えるからな、向日葵は。
あ、小さいのだ。
良かった……。
「ケーキ、確か星哉はチョコ好きだったから」
また、意地悪してみようかな。
「俺、チーズの方が好き」
チョコで当たりなんだけどね。
「え、嘘……知らなかった」
まーた、引っ掛かった。
「……嘘だって、いちいち本気にすんな」
頭をくしゃくしゃ撫でれば、シャンプーの仄かないい香り。
……手を伸ばすのに足が不自由。
うわ、左足、結構キテる。
そんなことを考えながら、向日葵の話に相槌を打つ。
チョコケーキを小さく切り分けて口に運びながら、隣を見れば嬉しそうに頬張っていた。
「向日葵、今度さ外泊取るつもりなんだ」
「え、ほんと?」
「うん。車イスになるけどさ、一緒に遊びに行かね?」
「行く行く行く!」
「よし、決まり」
自然に手を握れば、温かい小さな手がそれに応えてくる。
小さくて、頼り気なくて、まだ弱い。
「星哉、また来年も再来年もケーキ食べようね」
……ああ、そうだな。
少しの試練を越えればそんなこと、
いくらだって出来るさ。