柚の顔を見上げると、ぷいっとそらされた。
「なになに?聞こえなかった」
「あ、いや......」
「なんて言ったのー??」
なんてね。
本当はなんて言おうとしたのか分かってる。
けど。
「し、ししし知らん。なにも言っていない」
動揺して眼鏡を抑える手が震えてカチャカチャと音を立てている。
この照れっぷりが面白くて思わずからかってしまう。
「ねぇ、なにー?『君のほうが、かわ...』のあとはなんて言おうとしたの〜??」
「っ......!?聞こえているじゃないか!もうそこまで聞いたのなら分かるだろう!?」
「えー?わかりませ〜ん」
「...絶対に言わないからな...!!」
「なんで!?ひどーい!!」
私たちの声を聞きつけてか、翠たちも戻ってきた。
「ずいぶん盛り上がってんじゃーん!なになに??」
「栗原!俺には注意しといて自分はイチャイチャしてんのかよ〜!!」
「なっ...!?い、イチャイチャなどしていない!!断じて違う!!」
最初は変な人だと思っていたけれど、
柚と仲良くなれて本当によかった。
......まあ変人なのは変わらないんだけどね...。
けど。
転校生くんは
とっても良い子でした。