「......ということで、家庭の事情でこの時期の転校になりました。栗原柚くんです。みんな仲良くしてくださいね」


「よろしくお願いします」


礼儀正しくぺこりと頭を下げる柚。

先生に促され、私の隣の席に座った。


あー、だから隣がずっと空いてたのか。


「君が隣だったのか」

「そうみたいだね。改めてよろしく」


「栗原くんていうの〜??」


私の前の席から翠が振り返り話しかけてきた。


柚に興味津々のようだ。


「よろしくね!私は佐伯翠!!」

「佐伯くんか。よろしく」

「あはは!なに佐伯くんて!!先生じゃないんだから〜!」


翠のペースに柚もタジタジだ。


「む......そうか。ではなんて呼べば...」

「フツーに翠でいいから!!」

「み、みど...り?いきなりそんな風に呼んだら君に失礼じゃ」

「ぜ〜んぜん!てか佐伯くんて呼ばれる方が嫌だし!」


明るく笑う翠に戸惑う柚に、小声で耳打ちした。


「翠はね、ほんと裏表なくてこのまんまだから、安心していいよ」

「......そうか」



「はーい、佐伯さん、城木さん。転校生をいじめてはだめですよ」


先生に優しく注意された。

しぶしぶ「は〜い」と返事をする翠。


「それじゃあ柚、またあとでねっ!」

「え......ゆ、ゆずって...」


今度は私に小声で耳打ちしてきた。


「いきなり呼び捨てにされてしまったのだが...この場合はどうしたら......」

「いいんじゃない?」



そーゆー子なのよ。翠は。