その後ろ姿を見送る栗原くん。


「......なんとなくだが、俺はあの人に嫌われている気がする」


「う...うん」


そういう空気は読めるのね......栗原くんは。



「なんかごめんね。普段はぜんっぜんああいう感じじゃないんだけどね。あの人」


「そうなのか」


「うん。むしろ和泉先生が一番喋ってる」


「......そうか」


ふとなにを思ったのか、栗原くんはチラリと私を見るとすぐそっぽを向いて眼鏡をクイクイ直し始めた。


なんだかソワソワしているように見える。


「......え、なに?栗原くん」


そう聞くと、栗原くんはおずおずと口を開いた。







「......俺のことは『柚』と呼んでもらって構わない」







......ゆず?


ああ、そういえばそんな名前だったっけ。


ずいぶん可愛い名前だ。




......え?てかなんで急に?