「答えは以上だ」


「じゃあさ、あの...」


「もう終わりだ。これ以上は答えない」


「え!?なんで!?」


クイッと眼鏡を直して栗原くんは続けた。


「この塾に連れて来てもらった分は答えたはずだ。もっと聞きたいなら、君のことも教えてもらわないと釣り合わない」


な...なんだそれ!!


「めんどくさ!」


「当然だろう。取引とはそういうものだ」


え、これ取引なの?


そんな大それたことをしていたのか...私たちは...。







その時、ガラッと自習室の扉が開いた。





「お疲れ......って、全然勉強してないじゃん」


「......和泉先生」


ポケットに手を入れ入ってきた先生は、チラリと栗原くんを見た。


「俺もこんなこと言いたくないんだけどさ。立場上、注意しなきゃいけないんだよね」

「あ......和泉先生、あの」


なんだろう。

なんか今日の先生、雰囲気が違う。

喋り方がいつもより丁寧......と、いうか。


なんだか距離を置きたいようなオーラが......。



「一応、勉強道具くらいは出そうか?君が来たいって言ったんだよね。ここに」


「すみません。雑談に夢中になってしまいました」


「謝らなくていいよ。他に誰もいないからおしゃべりしたくなる気持ちは分かるから」


「......すみません」


栗原くんが怒られている間、私はなにも言えなかった。



「じゃあ、また様子見に来るから」



あっという間に先生は戻って行ってしまった。