「よし。ではさっそく勉強をしよう」
適当な席につくなりそう言った栗原くん。
その左隣の席に私も座る。
テスト期間が終わったからか、まだこの教室には私たち以外誰もいなかった。
「君はなにが苦手なんだ?たしか文系が得意と言っていたが......数学や化学が苦手なのか?」
「う、うん......」
本当に勉強を教えてくれるのか。
一体この人はなんなのだろう。
そして今日転校してきたばかりの全然知らない人に勉強を教えてもらうって、どんな状況なんだろう......。
「あのさ、栗原くん」
「どうかしたか」
「やっぱり教えてくれない?」
「今から教えると言っているだろう」
そっちじゃないわ!!
「だからさ......本当の理由」
「......」
黙ってしまう栗原くん。
構わず続ける。
「やっぱり気になるんだよね。全然分からないんだもん。あなたのことも、あなたが考えていることも」
素性や行動が全て謎。
そんな彼に私はどう接したらいいか分からない。
このまま普通の友達のように勉強を教えてもらうわけにはいかない。
「......教えてくれるよね?栗原くん」