「それじゃあそろそろ帰りますね。ごちそうさまでした」
夕飯におかゆを作り、2人で食べた。
結局長居してしまった。
「はいよ。悪いな送っていけなくて」
「病人は寝ててください」
玄関を開けると外はすっかり真っ暗だった。
4月とはいえなかなか夜は冷える。
「うー・・・さび。ほんとに平気か?」
「歩いてすぐですから」
「そうなの?」
「私も今日知りました。ご近所さんだったんですね」
「・・・・・・あー、やっぱちょっと待ってろ」
先生・・・・・・い、和泉先生、か。
まだ慣れないな・・・・・・。
和泉先生は部屋に入っていき、戻ってくると手にマフラーを持っていた。
「すぐだから大丈夫ですって」
「だーめ」
男物のグレーのマフラーが私の首に巻かれた。
ふわりと和泉先生の匂いがした。
「よし。これでたとえ晴が風邪引いても、俺のせいではないな」
「・・・・・・さいてー」
「冗談冗談」
和泉先生は最後に頭をぽんぽんと撫でた。
「じゃあ気をつけてな」
「・・・・・・ありがとうございます」
「あ。そういえば言い忘れてたことがあったんだ」
「え?なんですか・・・・・・ひゃっ!?」
いきなりマフラーをクイッと引っ張られ、その勢いで私は和泉先生の胸の中に飛び込んでしまった。
ぎゅうと抱きしめられ耳元で囁かれた。
「のこのこ男の家に1人で上がるなよ。どうなっても知らねぇぞ」