会社の入口のようなガラス製の押し扉のノブを掴み、グッと押し込む。


その勢いに任せ飛び込むと、冷えた顔がブワッと熱気に包まれた。


季節は三月。


1歩進むと左横に靴箱。


目の前にはここの生徒たちのものだと思われる乱雑に脱ぎ捨てられた靴が散らばっている。


玄関まで効いた暖房の熱風が、ドキドキが止まらない私の体を優しく包み込んだ。


「・・・・・・あったかい・・・・・・・・・・・・」


靴を脱ぎ玄関の端っこに揃えて置いた。


けれど人見知りというのは怖いもので、もう1枚ある扉を開ける勇気がなかなか出ない。


時間稼ぎなんかしてもまったく意味は無いのに、脱ぎ捨てられているスニーカーやブーツを揃えて玄関に並べた。


ガラスの扉越しにうつる中の様子。



パッと見で大人は5人くらい、生徒は・・・・・・分からない。たくさんいる。





そーっと、静かに、扉を開けた。





中は思っていたよりガヤガヤしていて、勇気を出して飛び込んだのに誰も私に注目しない。