用を足して、トイレから出て手を洗うと、ベランダに人影が見えた。
......まさか、泥棒!?
だとしたらやばい...!
リビングや寝室はドアの向こうだ。
泥棒と2人きり...。
私1人じゃ勝てない。
寝ている男子たちを起こすためには、この人の目の前を突っ切らなくてはいけない。
その間に気付かれたらおしまいだ。
足はそんなに速くないけど......私にみんなの命がかかってる!
よし、行くぞ............いまだっ!!
「なにしてんだ」
「ひゃっ!?」
まさに走り出そうとしたその瞬間、泥棒に声をかけられた。
逆光で見えなかったけど、よく見ると和泉先生だった。
「びっくりしたぁ......なんだ先生かぁ」
「なんだってなんだよ」
「泥棒かと思いました」
「ひでーな」
くす、と先生は笑うと、私に手招きした。
「こっち来て見てみろよ。今夜は満月だぞ」