「ただいま!」
帰宅すると母が出迎えてくれた。
「おかえり〜!どうだった?初めての授業!」
ポンッとあいつの顔が浮かんだが、すぐに振り払い良かったよ、授業も分かりやすかったしと答えた。
自分の部屋にリュックを置いて着替えリビングに戻った。
テーブルにはホットココアが置かれている。
「寒い中歩いて帰ってくるの大変だったね〜。さ、飲んで」
「ありがと。けど15分くらいだし大丈夫だよ」
あ〜、あったかい・・・・・・ココアが身に染みる。
「ところでどうするの?塾は。通えそう?」
「・・・・・・通う、よ」
「そっかそっか!それじゃあお母さん、明日塾長さんに会ってくるね!ふふ、楽しみ〜」
「なんで楽しみなの?」
「あら、あんたチラシちゃんと裏まで見た?ほら、見てみなさい」
なぜか浮かれるお母さんに促され、再びあのチラシを見てみた。
・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「ね?塾長さんかっこいいでしょ!?こんな若いのに二枚目で頭も良いってことよぉ!世の中にはこんな人がいるのね〜お母さん楽しみよこんな人とお会いするの〜!」
“櫻田和泉”先生が責任者を務めるこの塾は・・・・・・
という文面が目に入りとりあえず私はココアをぐびぐび飲んだ。
なんでだ・・・・・・。
なんでよりによってこいつが責任者なんだ!!!
ほんとに大丈夫かな、これから・・・・・・。
そんな私の思いとは裏腹に、お母さんは着ていく服のファッションショーを始めていた。