とにかく早く帰りたい私はチラチラと時計を確認した。
あと・・・五分・・・・・・あと三分・・・あと・・・・・・。
「そろそろ時間だな。じゃあ次回までに応用問題を解いておくこと。はいさようならー」
おわった!!よっしゃ!!!
途端に周りはガヤガヤし始める。
友達同士で通っている生徒もけっこう多いらしく、男女比でいうと少し男子が多いくらいだ。
冷静に周りを見ていなかったけれど、私と同年代の子は少ないみたい。
それもそうか。だいたいみんな受験生になってから通うんだろうな。
帰り支度をしていると、櫻田・・・・・・先生、を付けてあげよう。
櫻田先生が歩み寄ってきた。
「おつかれー。どうだった?初めての授業」
分かりやすかったです。と言うのはなんとなく癪で
「大丈夫です」
とぶっきらぼうに答えた。つもりだったが・・・・・・
「ぶはっ!」
なぜか笑われた。
「なんだよそれ・・・・・・ははは、俺が授業でヘマするの前提みたいな」
「えっ!?あ、いやそういう意味じゃなく!」
「分かってる分かってる」
口を手で軽く隠しながら笑う櫻田先生。
その間にも生徒からの先生さよならーという声にはいさよーならーと返している。
すると私まで注目を浴びているような気持ちになった。
な・・・・・・なんか恥ずかしい。
からかうし、ほんとに嫌だ、この先生・・・・・・!
私が羞恥から頬を赤く染めると、先生はまたくすっと笑った。
気がつくと生徒はみな帰っており、教室には私と櫻田先生のみになっていた。