「......先生。あの...」
コツンとおでこをこづかれた。
「こーら。今は『和泉』だろ?」
「............あの...」
「って聞いてないし」
先生の顔を見上げると「ん?」と優しく笑って首をかしげた。
「あ......私っ......」
どうしよう。
何を言うか全然考えてなかった。
なのになぜか、言わなくちゃって思ったんだ。
顔と体がほてってきた。
手が汗でびちょびちょになっているのが分かる。
周りの光の粒に当てられて、先生の姿がキラキラしているようで......見とれてしまった。
長い時間が経ったような気がしたけど、きっと本当は数秒だったのだろう。
ぎゅうっと拳を握った。
なんとか声が振り絞ろうとした時、
「......やばい。そんな顔で見るなよ」
フワッと先生に抱きしめられた。