「とにかくさ。晴も聴いてみろよ」
すると先生は試聴用のヘッドフォンを私の右耳にくっつけた。
指が耳に触れてドキリとした。
そして先生は自分の左耳にもう片方のヘッドフォンをくっつけた。
......え?え?なにこれ。
ち、近っ!
「ほら。自分で持って」
「へ?あ、はい」
先生の手の甲と私の手の甲がぶつかりそうなくらい近い。
すぐ隣に先生の顔がある。
ちょ...ちょっとっ...!
ほんとにこの人、パーソナルスペースがおかしい!!
ドキンドキンと心臓がうるさい。
「ほら。すげぇいい曲だろ?」
ハッとなって耳を傾けると、流れてくるのはガンッガンのロックだった。
「...あれ?なんか聞いたことあるかも」
「ああ。建設会社のCMにちょうど今使われてんだ」
「へぇー」
ノリが良い。特にサビがけっこう好きかもしれない。
今までJPOPとかアイドルの歌しか聴かなかったから、なんだか新鮮。
「なかなかいいもんだろ?」
「そうですね。歌詞は英語で全然分かんないけど」
「歌詞よりメロディが重要だろ」
「え?歌詞のほうが重要ですよ。じゃないとどんな曲か分かんないじゃないですか」
「いやメロディがよければ名曲だろうが」
「......」
「......」
なんか昔お父さんも同じこと言ってた気がする...。
もしかしたらこれが若い子とおっさんの違いなのか......
「今なんか失礼なこと考えてるだろ」
「考えてませーん」