着いたのは入口からほど近いCDショップだった。
しっかりと手を握られたまま連れてこられたそこには、新発売のCDアルバムがいくつかずらりと派手なポップに飾られ、並んでいた。
その中から先生は嬉しそうに1枚のCDを手に取った。
「よっしゃ。これこれ」
...ご機嫌な先生。
「好きなんですか?そのグループ」
「おう」
「......なんて読むのこれ?ぶれいすてぃっと?」
「『Bleistift』。ブライシュティフトだよ。イギリスのロックバンド」
「ぶ、ブライ...?」
だめだ。覚えられない。
1発で覚えられないグループのCDをニコニコしながら見つめる先生。
その左手は相変わらず私の右手を掴んだまま。
「今日新しいアルバムの発売日だったんだよ。よかった買えて」
「そうなんですね」
......もしかしてそのために今日ここまで来たんじゃ...。
「小さい頃から親父の車でよくかかってて。すげぇ好きなんだ」
「......はい」
「晴は洋楽とか聞くか?」
「あの、先生。それよりも......いつまで手繋いでるんですか」
「へ?......あぁ!?」
すると先生はびっくりしてバッと手を離した。
え、ええー......?なにその反応?
「おっ俺、いつの間に...!わ、悪い」
「...気づいてなかったんですか」
「ブライシュティフトのポップが見えたからつい急いじゃって...」
ああなるほど。そういうことか。
「興奮していたいけな女子高生の手を掴みここまで引きずってきた、と」
「そんな言い方ないだろ!」
「そうゆうことですよ」
まったくもう。
......あんなに勢い良く払うことないじゃん。
なんかショック。