「え…?」
「今日から、しばらくは南と離れて暮らすことになるわ。いきなりでごめんなさい。」
「出て行くの!?」
「いいえ、南が出ていくのよ。」
「え…っ」
どうして?なんで?!
え、私が…?
出ていくってどこに?
そもそもなぜ?
え、え?え、
頭は混乱して整理がつかない
それなのに母は、キャリーバッグを開くと
「ここには、私服、ここは靴下ね、下着はここ、それと、勉強道具はここにまとめてあるの。」
私をほって、淡々と話していく母。
キャリーバッグの点々を指さして、私の私物を紹介してく。
私が身支度を済ましている間に準備していたのだろう。
でも、私は思考が追いつかなった
母の話してる声さえ聞こえなかった
「ね、ねぇ、ねぇってば!嘘だよね?」
母は止まらず
「ここには、歯ブラシがはいっているの。新しく変えといたわ。それと、」
「ねぇ、聞いてんの!?」
「…」
「なにがあったん…?冗談なの?」
しばらく沈黙が続いた。
母は、俯いたままだ。
どうして黙ってるの…
説明してよ!!
「なぁ。」と私がもうひと声、発した。
それでも母は俯いていた。
…
なんなの、わけわかんないよ。
母が話し出すまで、と私も黙った。
………
母は、すぅ、と息を吸うと
「ここにはね、南のお気に入りのお菓子があるの…でね、ここには」
また話し始めたのだった。
しかし…しばらくして、
一粒の涙を流した母。
それを見て、何も言えなくなった
本当のことなんだ、と、やっと身にしみた。
「…っ、お母さん。」
それに、理由は聞けなかった。
聞いてはいけない気がした。
母を傷つけてしまう気がしたから。
こんな時に、そう思えるのは自分ながら冷静だな、と感じる。
でも、でも、でも!
「出ていきたくない…」
やっぱり、これは伝えたい。
「…ごめんなさい……私の、私のせいなの。」
「…何日くらい会えないの?」
「…最低1ヶ月、いつかは会えるわ。絶対。」
「1ヶ月…、私は…どこに行くの?お母さんはどうするの?」
「南は、今から私とその場所へ向かう。
お母さんは大丈夫よ、ずっとこの家にいるわ。」
「わかった…大丈夫なんだよね?」
「えぇ、きっと、大丈夫。」
「これからどうなるの?」
「大丈夫よ、…私が言うんだから大丈夫。」
「…うん。」
不安しかなかった。
でも、大丈夫、という言葉。
それが背中を押した。
何が起こってるのかは分からないけど、
これからどうなるかわからないけど、
ほんの我慢だ。
私は、キャリーバッグを持って車に乗り母とある場所に向かった。