筆記用具、教科書、ノート、ハンカチ、水筒、お弁当、下敷き… 1点一点、通学鞄に入っているか確認する。 「よし、大丈夫だ。」 顔を上げて、気を引き締めるように、唇を軽く噛んだ。 今は、5時40分。 少し早いか、と思いつつも玄関に行き、 靴を履く。 そして、ドアを開けた。 もう母からの「行ってらっしゃい。」という言葉はない。 慣れたはずなのに、少し背中が寂しかった。