『あなた方を信用してお願いしたいのですが。来週の頭に、アンヘラが客船でのディナーショーを行うことになっておりまして。是非警備をお願いしたいのです。』

『あら、そういうことは警察に頼むのが一般的ではなくて?何か事情がおあり?』



 アロンソ氏は『ええ……』とくぐもった声を出す。ショーの警備をマフィアに頼むだなんて、よっぽどヤバいファンが居るのだろうか。近頃のアイドル達は大変ね。お立ち台から引きずり下ろされて怪我した人も居るらしいし……

 そんなことを考えていると、少しばかり躊躇っていたアロンソ氏が口を開いた。そのトーンは、爽やかな微風のようだったさっきの声と比べ、嫌に重く聞こえる。



『実は……熱狂的なファンなのか彼女に恨みを持っている人物なのかは分からないのですが、おかしな手紙が届くようになりまして。』

『と、言うと?』

『“君の秘密を知ってるよ”とか、“いつも君を見ているよ”とか……これじゃファンじゃなくてストーカーでしょう!?
アンヘラは気味悪がって眠れない日が続いていますし、頻繁に体調を崩すようになりました。皆さんに何とかして頂きたいんです!お願いします!!』