アタシの予想通り、夕食のメインはロブスターのパエジャだった。ピンチョス(今回はパンに魚と野菜を乗せている)やコンソメスープも美味で、デザートのフラン・デ・チョコラテ(チョコレートプリン)にはイリスが歓喜の声を上げていた。

　金持ちの家庭では、主人と使用人は共に食事をしないものかも知れない。だが、エストレジャ家は違う。風邪や怪我、所用などの特別な場合を除き、必ず全員で行うことになっているのだ。

　我が家の家訓の一つに、“使用人も家族の一員”というものがある。シンデレラを召し使いのように扱った継母に聞かせてやりたいものだ。



「――そういえばお前、まだ18なんだよな。道理でフェルナンドさんと皐さんと俺しかワインを飲んでなかった訳だ。」

「パパは厳しいから、『マフィアと言えど酒と煙草は二十歳からだ』といつも言っているわ。珍しいわよね。」



　入浴後、ベッドに腰かけて話していると、突然ノック音がした。ドアを開ければ、ピンクのパジャマに身を包んだイリスが寂しげに立っている。どうやら一緒に寝てくれと言いたいらしい。

　イリスを挟み、三人並んで横になる。今夜は良い夢が見られそうだと思いながら、そっと瞼を閉じた。