群の表情が徐々に険しくなっていく。人には感情を表に出すなと説教する彼も、こんな時は自分の思いをひた隠しには出来ないらしい。彼もまだ、ボスになって三年目なのだ。アタシより少し、キャリアが長いだけで。



「大丈夫よ、ガルシアは。アタシ達がついてるもの。」

「……そうだな。いや、自分と少し重なってな。もしかして、ソニアやグレイも何か事情があってローサに入ったのか?」

「鋭いわね。まぁ、それはアタシから話すべきことじゃないわ。夕飯、食べに行きましょう?」



 そう告げると、曇っていた顔が笑みを取り戻す。「お前に慰められるとは、俺もまだまだ青いな」と自嘲気味に、しかし「未来、ありがとな」と言葉を付け足し、アタシの頭――髪の毛に、羽根のようなキスを落とした。

 いつでも透明な、曇りのない愛をくれる群。日本人らしくあまり言葉にはしないタチらしいけれど、その仕草からしっかりと伝わってくる。だからアタシも同じように返すべき、なのだと思う。



「……どういたしまして。」



 飴色の髪に、そっと触れる。先刻彼が言っていた“もう少し堪能させろ”という意味が、ほんの僅かだが分かったような気がした。