「……アナタ、いつまでそうしているつもり?」

「良いじゃねぇか。久々に会ったんだから、もう少し堪能させろ。」



 クスリ、という笑みの後で、群はアタシの首筋に、ふわりと唇を寄せた。二ヶ月は確かに長かったけれど、こうまでされると子供扱いしたくなってしまう。

 ――なんて、そう思っているアタシも十分子供なのだけれど。



「……今日は何処かへ泊まるの?良ければこのまま、ウチへ泊まっていかない?パパが喜ぶわ。」

「なら、お前の言葉に甘えさせてもらうぞ。後悔するなよ?」



 意味深長な台詞を口にし、ほんの少しだけ顔を上げた群がニヤリと笑う。心臓がゴトリと音を立てるけれどポーカーフェイスを決め込んだアタシの意図を、果たして彼は見抜いているのだろうか。

 その時、ドアの外に人の気配がした。誰かが夕食の支度が出来たことでも伝えに来たのだろう。そう思い、群の肩を静かに二度叩く。



「ねぇ、そ……」



 言葉を奪われる。“外に誰かが”という言葉が。彼の紅色の唇が自分のそれを塞いでいるということだけが、瞬時に分かった。理由までは分からないが、悪戯好きな群のことだ。扉の向こうの人をからかっているのだろう。