垂れ下がる金髪の隙間からチラリとアタシ達を窺うイリスに再び笑いそうになりながら、群を自室へ案内する。朝方ガルシアとの些細な言い合いを繰り広げたこの部屋に、彼を通すのは久し振りだった。

 黄金に輝くドアノブを回せば、見慣れた景色が広がる。が、群にとっては懐かしい場所になっていたようだ。フッ、と止まった吐息が、それを物語っていた。



「……この空気、久々だぜ。」

「でしょうね。二ヶ月経っているもの。」

「すっかり秋らしくなったな。この前来た時は涼しそうなカーテンだっただろ。」

「秋に浅黄色では寒々しいでしょう?ワインレッドだとホテルの一室みたいで落ち着けるからって、マルタが替えてくれたのよ。」



 カーテンを含めたシックな小物達は、高級・贅沢を意味する“lujo”というブランドで揃えてある。その意味とは裏腹なシンプルな上品さが、真の贅沢で人気の秘訣なのだろう。

 部屋のやや中央に位置するテーブルは、夏は金の蔦模様が施されたガラス製だったが、今は紅葉が描かれた漆塗りだ。床には柔らかな羽毛絨毯を敷き、タンスや本棚は暖かさを感じさせる木製。左隅にあるシンプルなドレッサーだけが、昔からそのままだった。