『父の引退の件と、もう一つの祖国が犯した過ちは認めるわ。父は“飽きたからだ”と適当に言って何かを隠していたし、歴史上の事実は変えられない。
……だけどアンタの発言、少しだけ訂正して欲しいわね。アタシの母と婚約者を見下さないでくれるかしら?遠回しに父のことも馬鹿にしているように聞こえるわ。』



 思わず低くなった声はもうごまかすことが出来ない。既に発してしまったからだ。新人の部下数人が震え上がったのが目の端に映る。次の瞬間、白スーツの男が高らかに笑った。



『噂通りだな、ドン・ローサ!女のクセにやけに肝が据わってるじゃないか。少しは楽しませてくれると思って良いんだな?』

『……何が言いたいの?いきなり人に弾丸を放っておいて、しかもわざと外すなんて。』

『今日は挨拶に来ただけだったんだが、お前を見たらつい怒りが抑えられなくなってしまってね。実戦が楽しみだ……』



 フランシスコは闇に染まった伏し目でクスクス笑い、アタシ達を再び視界に入れた。縮こまる新人達と睨みを利かせる熟練者達。その中央に構えるアタシに、奴は咆哮した。



『……僕が新生ソルファミリーのボス、フランシスコだ!覚えておけ!!』