『……アンタ、アタシの体見るつもり?高いわよ?』

『あぁ、これは失礼しました。群様より先に拝見しては、わたくしが殴られてしまいますね。』



 そうじゃないわよ。何なの、その皮肉めいた口調は。アタシに恨みでもあるんなら解雇するわよ、エセ小舅。

 ガルシアが読心術を心得ていないのを良いことに、アタシは今日も心中で毒を吐く。これが群の前だったら、そうはいかないのだけれど。



『……ねぇ、アタシ着替えたいの。早く出てってよ。』



 野生の狼を追い返したこともある目を向ければ、ガルシアは漸く部屋を出て行った。居座らないだけマシだ。これが群なら、「俺のことなら気にすんな」とか言いながら、楽しそうにこちらを見つめたままだろうから。

 アタシは白いカッターシャツを着て動きやすい素材のグレーのミニスカートを穿き、下の方に赤い薔薇のアップリケのついた黒いネクタイを結んだ。長く伸ばした黒髪は軽く巻き、顔には薄く化粧を施す。肌に近い色のストッキングを穿いて、最後にスカートと同色のジャケットを羽織れば“正装”の完成だ。アタシは玄関で黒いブーツを履き、専属運転手の運転でいつもの店へと向かった。