「……いつまでもめそめそ泣くんじゃねぇ。俺は死なねぇから、早くケリ付けてこい。」



　微笑が一転し、チェーロのボスとしての厳しい表情で言う群。それを見たら、何としてでもフランシスコに勝たなければならないと思った。保証もないのにあんな言葉を使った彼に対しての、アタシの誓心だ。



「……ええ。心配しなくても、アタシは負けないわよ。アナタは少し休んだ方が良いわ。」



　群は小さく笑んで、眠るように瞳を閉じる。医療班が彼に駆け寄って措置を施すのを確認し、せり上がってくる感情を抑えて再び敵と向き合った。



『この際、ボスの座なんてどうでも良いわ。アタシの大切な人を二人も傷付けた罪は重いわよ？』



　スペイン語で威嚇し、安全装置を外した銃を奴に向ける。手に馴染むそれは、トリガーを引かれるのを今か今かと待っていることだろう。もう五年以上愛用してきたから、この子の性格はよく分かっているし、相性も良い筈だ。ターゲットを貫くまでの軌道を、頭の中で数通りイメージ出来るくらいなのだから。

　アタシの台詞を聞き、フランシスコは闇のような瞳を愉快げに細める。感情に左右されるアタシを嘲笑っている表情だ。