『良いのか?ドン・ローサ。死人を出すのはお前達のポリシーに反するんだろう?』



 憎たらしく歪んだ口元に拳をお見舞いしてやりたくなった。だが、あくまで冷静に口を開く。アタシの中に、ボスとしての誇りがあるからだ。



『……心配ないわ。アタシは誰も傷付けさせない。
自分のファミリーを守れなくて、何がボスよ。仲間に危険が迫っているのにあぐらをかいていられるのは、ボスじゃないわ。ただの“大将気取り”じゃない。』



 いよいよ怒りに染まる、奴の顔色。ここまで殺気が広がってくると、恐怖を感じるどころか逆に笑えてしまう。コイツはアタシと似て、どうやら気が短いらしい。自分と同類だと考えるのは不本意だけど、煽り方が分かるのは得だろう。



『あら、どうかした?アタシは持論を言ったまでだけど。』

『白々しい……お前は僕を本気で怒らせたいようだな。ここに来ただけの覚悟はあるって訳か。』

『怒る・怒らないはアンタの精神的な問題じゃない?』



 最後の一言が、引き金になったらしい。狂ったような雄叫びを上げ、こちらへ突っ込んでくるフランシスコ。奴の手元に銃を確認したアタシは、即座に愛用品を掴んで構えた。