『……これはこれは。眉の片方くらい動かしてくれても良いんじゃないか?ドン・ローサ。相変わらずのポーカーフェイスでは、求婚している僕は傷付いてしまうよ。』

『ごめんなさい、こういう訓練を受けてきたものだから。生憎アナタのように表情豊かではないの。』

『またそんなことをおっしゃられる!それが貴女の魅力の一つでもあるのだがね……』



 クスクスと彼が笑えば、メキシコ人らしい真っ黒な髪の毛が揺れた。その瞳はマフィアなのにやけにキラキラしている。

 どうしてこの人には闇世に生きる人間特有の、光を宿さない表情がないのだろう。考えてみるとおかしな話だ。本当に中小マフィアの中でも上位に居るファミリーのボスなのだろうか。



『……アナタ、変ね。』

『ほう……よく言われるが、具体的にどう変なのかお聞きしよう。』



 読心術を心得ていないアタシでも、ある程度の心の動きは顔色から読み取れる。彼は動揺はしていない。目を見開いたところから、アタシにそう言われたのが意外だったのだろう。



『……マフィアらしくないのよ、アナタ。初めて会った時と少し印象が変わったわ。本当にクレオの指揮を取っていらっしゃるのかしら?』