『未来、ごめんなさい……私、心配になって……凄く、大きな音が、したから……』

『喋らないで!今医療班を呼ぶから、大人しくしてるのよ!!』



 アタシの声と同時、ガルシアが携帯で仲間に連絡をする。群やその部下達、ソニアとグレイも、イリスの側に集まってきた。ソルの陣営は黙ったままだ。



『ねぇ、未来……』

『喋らないでと言ったでしょう!?』

『未来、言わせてやれ。イリスが望んでることだ。』



 心なしか曇りを帯びた棕櫚の目がそう言った。彼も本当は、一刻も早くイリスを治療してやりたいのだ。大切な人を失ったことがあるなら、その気持ちも大きいだろう。“守りたい”からマフィアになったと、彼は言ったのだから。



『……分かったわ。』

『イリス、何を言いかけたのか話してくれねぇか?』



 微苦笑をイリスに向ける群。イリスも小さく笑って、続きを口にした。



『私、ローサのお屋敷に来るまで、散々な生活だったの……でも、未来やみんなが優しくしてくれたから、毎日が楽しくなった……』



 虚ろなアイスブルーが濁った夜空を見上げる。彼女は思い出しているのだろう。アタシに拾われた、あの日のことを。