『そこまでだ。未来もフランシスコも、武器を下ろせ。』



 圧倒的な威圧感が隠ったコントラバスのようなトーンと、棕櫚の瞳。アタシ達の間に割って入ったのは、フランシスコのものとはスケールの違う、大きく長い刃(やいば)。それは、アタシの銃とフランシスコのナイフを同時に制していた。



『ほう……剣の角度、考えたな。“現代に生ける侍”と噂されているだけではなかった訳か。』

『侍?ちょっと違うな。俺がやってきたのは武士道じゃなく、フェンシングだ。まぁ、多少は剣道なんかにもたしなみはあるがな。』



 日本の刀(かたな)は斬り、西洋の刀は突く。その違いを語った群を横目に、フランシスコはゆっくりとナイフをしまった。棕櫚の瞳がこちらへ向く。促されるように、アタシも銃を元の場所へ戻した。



『お前ら、部下が心配してるのが分からねぇのか?そうでなくても、ここで乱闘するのはマズイ。今日暴れんのはやめとけ。』



 こんな民家が近い所で争ったら一般市民を巻き込んでしまう。だから日を改めろ、と彼は言いたいのだろう。確かにそうだ。そう思ったアタシの耳に入ってきたのは、倉庫内に大きく響く舌打ちの音だった。