『……相変わらず、腹立たしい程冷静な男だな。だが生憎、お前に用はないんだよ。』



 黒い瞳がこちらを見てくる。その憎しみが隠った瞳には、言わんとしていることが確かに宿っている。



『僕は、そこの女と決着が付けたいんだ。どちらが上なのか、今の内にはっきりさせておいた方が良い。家族の敵も取れるなら一石二鳥だ。』

『……どちらが上か、ですって?』



 まさかコイツは、ローサを自分の傘下に入れようとしているのだろうか。群に戦いを挑まないということは、奴がチェーロを一目置いているということになる。そうなるとやはり、コイツの目的はアタシ達を従わせることなのだろう。



『……何処まで力を回復したのか知らないけど、もう一度地獄を見た方が良いんじゃない?』

『ふざけるな……あんなのは二度と御免だ!』



 叫んだフランシスコが、銃を持ってこちらへ突進してくる。アタシも左足のホルダーから愛用品を抜き取って走り出す。



『未来、やめろ!』

『ボス!戻って!!』



 群や部下達が叫ぶけれど、相手に戦う意思があるのだから仕方ない。張り詰めた空気の中、一定の距離を保ちながらの撃ち合いが始まった。