『……ガルシア、煩いわよ。アタシは眠いの。昨日群(ぐん)の長電話に付き合わされて、寝たのが今朝の2時なんだから。』

『おはようございますお嬢様。そのご様子だと、どうせ愛の告白でも聞かされたんでしょう?早く着替えて下さいね。』



 ガルシアの奴、顔色一つ変えないわね。相変わらず憎たらしいわ……25歳だか何だか知らないけど、ちょっと年上だからって良い気にならないで欲しいわね。その黒髪を真っ白に染めてもらいたいなら、話は別だけど。



「……ボスはアタシよ、エセ小舅。」



 ボソッと呟いてしまった日本語に墨色の瞳の秘書――ガルシア・ビエントは首を傾げる。アタシは『いえ、何でもないわ』と告げて、優雅にベッドから両足を下ろした。



『お嬢様……女の子なんですから、欠伸をする時にはお口に手を当てて下さいね。』



 出たな、このエセ小舅め。頭が堅いから、家だから気を抜いているというのが分からないのか。



『はいはい、次から気を付けるわよ。今日は何処に行くの?』

『ゴジャ通りのいつもの店です。』

『そう。じゃあ、すぐに着替えるわ。』



 アタシは薄水色のベビードールの裾に手をかけようとして、異変に気付く。