ローサの側からは歓声が上がり、チェーロの側からは苦笑混じりの拍手が起こる。大きく目を見開いている群の肩を叩き、エンゾさんがイタリア語で優雅に口にする。



『ボス。あなたがスポーツマンシップを破った時、既に勝敗は決定していましたよ。お嬢さん達にごちそう決定ですね。』

『ハハハ……そうだな。未来があまりに怖すぎたから、ちょっと焦っちまった。
流石はあの人の娘だぜ。妻にするならやっぱ、こういう危ねぇ女じゃなきゃつまんねぇよな。』



 言いたい放題言った群が、まっすぐアタシに近寄ってきた。おもむろに上がった彼の右手が、アタシの頭にそっと乗せられる。



「……飯行くぞ。『ジョバンニ』で良かったか?」

「あら、本当に奢ってくれるのね。」

「約束は約束だからな。仕方ねぇから、お前ら全員奢ってやる。」



 背を向けて、“ついてこい”というように手招きした群。大声で叫んで喜びを露にし、群を追いかける彼の部下達。『私達も行きましょ!』と言うソニア、『ボス、やったな!』と笑うグレイに背中を押され、群達の後を追う。ずっと黙っている秘書に目を向ければ、『なかなか面白い試合でしたよ』と仏頂面で言ってくれた。