『このセットは俺の勝ちだな。』



 静かに言った群。直後、大きな拍手と歓声が巻き起こる。悔しいけれど、とても華麗だった。アタシも小さく拍手を贈る。



『群さん、エンターテイメントで稼げるんじゃないか?試しに変装して、どっかのテレビ局にオファーかけてみろよ!』

『よせよグレイ。俺のキャラじゃねぇ。』



 二人のやり取りで笑いが生まれたのも束の間、すぐに球が配置されて、第3セットが幕を開ける。このセットを取って、たまには群を一泡吹かせてやらなければ。そんな決意を胸で呟くと、再び群のコイントスが始まった。運も味方しているこの男に対抗するために、アタシも神経を研ぎ澄まさなければならない。



『どっちだ?』

『……表。』

『……お前、表が好きだな。じゃあ俺は裏で。』



 雰囲気を和ませるためか、相手の怒りを煽るためか。いずれにせよ、アタシはその言葉を気に留めないことにした。開かれた群の掌を見る。今回は、アタシの勘が当たったようだ。



『直感が冴えてきたみたいだな。若干エンジンがかかるのが遅いような気がするが。』



 相変わらず、試合中に人を苛つかせるのが好きな男だ。ジロリと一喝する。