その時。一人の男がアタシのネクタイ――薔薇の紋章を見てガクガクと一際大きく震え出した。



『そ、その薔薇……ま、まさかっ!』

『あら、やっと気付いたの?お兄さん達観察力もおつむもなさすぎ。だからこんな簡単に銃口向けられんのよ。』



 銃を引っ込めても、二人は未だ震えている。アタシは殺人犯じゃないっての。今から会わなきゃならない何処かのファミリーのボスみたいに無駄に血の海を作るようなことはしてないわよ。マフィアってだけで人を判断しないで欲しい……と言っても、それは無理な話なのだろうが。



『真紅の薔薇……ローサファミリーが何でこんな所に!?』

『こんな所って何?マフィアだって人間なんだから、どっかには現れるわよ。』



 ――そろそろ人が集まってくる頃だ。銃声から五分は経過している。愛用品を元の場所に収め、アタシは恐怖で地面にへばりついたように動かない二人を見下ろして言う。



『こんな思いをしたくなければ、今後一切馬鹿なマネはしないことね。分かったら、早く行きなさい。』



 奴らはなかなか腰を上げない。見かねたアタシは、再び銃を向けて呟いた。



「……Fuera.(消えな。)」