何とか1番の球をポケットインすることが出来たので、プレイを続行させる。今日は調子が良い。酷い時には1~9のどの球も落ちてくれないこともあるのだ。

 悔しいけれど、群がブレイクで1番を落とすなら狙い通りだろう。とすると、外すのも狙い通りということかもしれない。アタシには、手球以外の何かの球をポケットに入れることだけで精一杯だというのに。



『余計なこと考えてるとミスるぜ?』

『煩いわね……黙っててよ。』

『分かったよ。黙ってるから、さっさと2番を落としてみろ。』



 皮肉めいた口調で言う群の口元は上機嫌だ。どうやら楽しいらしい。初心者とやってもつまらないと言う輩も居るけれど、彼は違うようだ。そう思ったら、肩の力が抜けてリラックス出来た。



『……どうした。緊張がほぐれたか?』

『ええ、お陰様でね。今日は9番が取れそうな気がするわ。』

『言うじゃねぇか。だが、その予想を外すのが俺の役目だからな。そう簡単には取らせねぇぜ?』



 静かに闘志を燃やすアタシ達の耳に、場を盛り上げる口笛や拍手、歓声が響いた。痛々しいギプスが取れたソニアが視界に入る。彼女はそっと、小さく手を叩いてくれていた。