短い話し合いの結果、“ナインボール”で3セット中2セット先取した方が勝ちとすることにした。ナインボールとは、1~9番までのカラーボールと手球の計10個の球を使い、カラーボールを番号順に手球で落としていくというゲームだ。最終的には、9番を落とした方が勝利する。



『お前、ちょっとは上手くなったのか?前に1セットだけやった時は、あんまり球がポケットインしないから苛々してたじゃねぇか。』

『……馬鹿にしないでくれる?アナタが笑うから余計苛ついたのよ。』

『おいおい、手加減してやってたのにその言い種か?』



 群はその時のことを思い出すと未だにおかしくなるのか、口元を綺麗な片手で覆っている。細まった棕櫚の瞳が、今はとても憎い。一瞬、その目を墨で真っ黒に染めてやろうかという考えさえ頭をよぎった。



『……オッケー。じゃあ、今回は手加減しねぇからな。』



 アタシの表情から判断したのか、群はそう言って、楽しそうに口角を上げた。彼の傍らのエンゾさんが審判を買って出た所で、広間に到着。部屋のやや中央にあるビリヤード台が、アタシ達を黙って迎えてくれる。

 ――さぁ、ゲームの始まりだ。