――懐かしさが漂う、群の部屋のドアをノックする。「未来か?入れよ」という台詞に相変わらず耳が良いことだと笑って、ゆっくりと入室した。



「……着てみたんだけど、どうかしら?」

「あぁ、似合ってる。俺のセンスが良いのと、お前が何でも着こなしてくれるっていう“相乗効果”だな。」

「……前者はウケ狙いなのかしら。真面目な話?」

「勿論ウケ狙いだ。」



 笑わなかったアタシを見て「失敗か」と悔しそうに、でも、何処か嬉しげに口角を上げた群。そんな彼は、アタシの髪の色と同じ漆黒の夜着に包まれている。



「……今日は色々と悪かったな。つまらねぇもんを見せちまって。」

「何故謝るの?それに、つまらないものなんて見ていないわ。」



 今ここに居るのはアナタを慰めるためではなく、ただ側に居たいから。そう告げたら群は、小さく笑って「ありがとな」と言った。その笑顔を見て、フッと“あること”を思い出す。



「そういえば……明日ってアナタの誕生日?プレゼントを用意する暇すらなかったわ。」

「とか言いながら忘れてたんだろ?酷いな。俺はお前の誕生日、ちゃんと覚えてるのに。」