小舅秘書に食べられてしまう前に、可愛らしいティラミスを少しずつ口に運ぶ。我が婚約者は組んだ手の甲に顎を乗せ、アタシが食事する様を何やら楽しげに見つめている。



「……あまり見ているとフォークで刺すわよ？」

「良いじゃねぇか、減るもんじゃないし。」

「あら、どうやら本当に刺されたいようね。」

「だから、お前の一言は怖いんだって。」



　尚もクスクスと笑っている群は、自分の目の前に座るエンゾさんに『こいつ、本当に面白いよな』とイタリア語で口にする。エンゾさんは応えて頷くと、『そういうあなたも十分面白いですよ』と言った。アタシが思うには、群は色んな意味でミステリアスなのだけど。



「未来。ナタリーに色々用意させるから、風呂に入ってこい。もしアンジェリーナも来たら、話し相手でもしてやってくれ。」

「群は？」

「俺は自分の部屋のバスルームを使うつもりだが……何だ？一緒に入りたいのか？」



　からかいの目を向ける群の足を、思いきり蹴っ飛ばしてやる。一瞬の悲痛な声を上げた彼の横をすり抜けると、微笑んでいるナタリーに案内を頼み、浴室へ。背後では、エンゾさんの笑い声とガルシアの溜め息が響いていた。