「そういえば、群はパステル(ケーキ)が好きなのね。よく食べている所を見かけるもの。」

「あぁ、ガキの頃から目がなくてな……特に母親が作るチーズケーキは良かったな。スペイン語ではパステル・デ・ケソって言ったか?」

「ええ、合っているわ。いつか群のお母様のパステルも頂いてみたいわね。」



 食後のパステルを頂こうとしたけれど、壁の時計と無言のにらめっこを始めたアタシ。その様子を見ていた群は小さく吹き出して、「気にせず食え」と促す。“少々太っても抱きかかえられるから安心しろ”ということだろうか。



『お嬢様が頂かないのなら、わたくしが遠慮なくもらいますが?もしくは、デザート好きの群様のお腹にでも。』



 呆れた視線をよこし、スペイン語で言うガルシア。そうはさせないとばかりに威嚇してやれば、彼は『でしたら、さっさと召し上がって下さい』と溜め息。アンタに乙女の気持ちは一生分からないでしょうね、ご愁傷様。

 心中で悪態をついたら、それを感じ取ったらしい群が“やめとけ”というように、ポンと頭に手を置いてきた。はいはい、分かったわよ。どうやら彼は、“秘書を大事にしろ”と言いたいようだ。