『あぁ、お前達か……一部始終見ていたが、大したことはないな。部下のピンチを救うことも出来ないとは、とんだ未熟者のボスだ。』

『ボスは悪くない!!部外者は黙ってろ!!』



 フランシスコに反論してくれるソニアの好意は嬉しいが、奴の言うことは間違っていない。ソニアに怪我をさせてしまったのはアタシの責任だ。



『何処までも上司に忠実な軽業師だな……俊足の芸達者に申し分ない秘書、それに一流の殺し屋。素晴らしい人材が揃っていても、それをまとめる者がこうでは全くの無意味じゃないか!』



 不快な声を上げて嘲笑する奴に、左手が動きそうになる。だが、ここで“撃って”しまえば、アタシは本当に未熟者ということになる。父の教えに反することは、ローサの血をも裏切ることになるのだから。

 部下達はアタシが何も言わないので、拳を握って怒りに耐えている。それを良いことに、忌々しい白スーツは言葉を続けた。



『お前を見ていると益々疑わしいな……本当に父上は、こんな女の父親と仲が良かったのか?誰かが面白おかしく作った馬鹿話だとしか思えないな。』